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金 聖雄監督インタビュー② 2024年2月8日掲載分

執筆者の写真: Maki IshikawaMaki Ishikawa

更新日:2024年2月28日

石川真紀より、みなさまへ。

ご縁をいただいているドキュメンタリー監督:金 聖雄さんに、

最新作「アリランラプソディ~海を越えたハルモニたち~」のお話しを伺いました。

本作の舞台は、神奈川県川崎市の桜本。

金監督は、そこに生きるハルモニ(韓国語で、おばあさんの意)たちに、

四半世紀にわたり寄り添い続けておられます。

計3回のうち、2回目を掲載します。

 

--- 金監督は、今回のハルモニたちの経験談のほか、冤罪にまつわる問題を含め、広く人権

に関わる事象を題材として、主に日本社会が抱える諸問題に毅然と目を凝らしておられます。

本作をご覧になる方々や後世の方々に、何を感じ、読み取ってほしいとお考えでしょうか。

 

金監督(以後:金):作る時は、とにかく説教くさくならないようにと、いつも思っています(笑)。今回は特に、正しいことを正しいと言う難しさみたいなものが、すごくあると思うので、自分もそうなんですけど、どんなに正しいことも、これが正しいんだと言われたら、なんかちょっと、なんだよ、と思ってしまうというか。正しいかどうか、何が正しいか、何がダメなんだということは、観た人が感じて、もちろんそれは、こちらが作りこんでいくわけですけど、芸風としては、あまり説教くさくないように。問題が先にあったり、ペンが先にあるというよりも、そこの中を生きている人たちの素敵さが伝われば、自ずとそのバックグラウンドにある恥部みたいな部分に行くだろうなと思うし、僕の場合はそういうふうな示された方をした方が、より残るというか。歴史的なことっていうのは後付けで、ある種の検証をもとに、これが正しいであろうという意味付けがされていくわけですが、ハルモニたちはそういうことは関係なく、自分たちが生きてきた経験、その言葉の重みというかね、それがうまく伝わるといいなと思います。

 そして、今回はやっぱり戦争はダメなんだよっていう、そういうことに思いが至ってくれればと。ハルモニたちは戦争を経験して78年経って、ようやく川崎の今の暮らしに辿り着いているわけですよね。ハルモニたち、すごいなって思ってくれるだけでもいいと思いますし、今のニュースで観ているものとリンクしてくれるといいなと思います。みんな繋がっているわけじゃないですか。例えば制度の問題にしても、在日旧植民地入植者を管理するためにできたものが、少しずつ対象者が変わって、今の入管の問題、ウィシュマさんの事件などに繋がっているわけで、戦争でその時に人が死んでしまうというだけじゃなくて、そのあともずっと続いていく。最 低限、ハルモニたちがなぜ、日本に、川崎に来たのかっていう背景と、在日という存在の権利を奪ってきた中に今が在るということを考えるきっかけになればいいかなと思います。

 

--- 今回も、金監督ご自身、かなり悩まれた結果、大手配給会社に頼らず、自力で配給・宣伝することに。

 

金:もちろん、販路が拡がって多くの人に観てもらうのが一番いいとは思うんですけれど、そこに至るプロセスについては、毎回悩みます。いきなりメジャーな映画のようにはできないし、マイナーな映画を一カ所一カ所どう拡げていくか。思いの部分では一人一人に届けていきたいっていうのがあるし、各地の上映館に足を運んで、この人一人のために映画を作ってよかったと思うのはすごく意義のあることなんですけど、効率的ではないですよね。

 そもそも今、映画の成り立ち方が歪なんですよね。基本的に、作っても売れないものを作り続けるっていう構図なので。ドキュメンタリー監督が増えないし、やっても一回切りだったり。じゃあ、配給会社に依頼したら必ずうまくいくのかと言ったら、そうでもないし。今回はこれでやってみますが、そのあとは少し考えないと。どちらにしても、ポンと預けるという形ではなく、同じような気持ちのパートナーとか小さな集団とやるというふうになると思います。

 

--- 金監督の作品は、鑑賞後のアフタートークなどで監督や一緒に観た方たちと共有できる

ことが醍醐味です。

 

金:ドキュメンタリーは、そういうセットが多いですね。本当は映画で語り尽くしているから、とか言ってもいいんでしょうけど(笑)。

観てくださる方と共有できることが、ありがたいです。

 

(記事は合計3回掲載予定。続きは2月下旬に掲載予定です。)

 

2024年2月17日(土) 東京・新宿「K′s cinema」より全国順次公開




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